弊社は大阪府立大学との共同研究において、モウソウチク抽出物の新たな効果を発見しました。食中毒のおもな原因物質であるノロウイルスの代替ウイルスのネコカリシウイルスに対し、不活化効果を確認。また、鳥取大学との共同研究において、鳥インフルエンザウイルス(H5N3)の不活化効果を確認しました。
*1:不活化とはウイルスの感染力が無力化されて、増殖ができない状態のこと。
竹の表皮および竹茹を粉末状に加工し、エタノールにて抽出したものをモウソウチク抽出物といい、既存添加物として収載されています。
ネコカリシウイルスは、エタノール50%以上で不活化されるおそれがあるため、モウソウチク抽出物の効果を調べるためには、エタノールを除去する必要があります。そこで、このモウソウチク抽出物からエタノールを除去した後、残った乾固物を精製水に溶解したものをサンプルとして、ウイルスの不活化試験を行いました。
現在、ノロウイルスの細胞培養方法が確立されていないため、ノロウイルス自体を用いての試験は行えません。そこで同じカリシウイルス科のネコカリシウイルスを代替ウイルスとして試験を行いました。
【試験機関】大阪府立大学大学院獣医微生物学
【試験方法】試験管内でウイルス液とクエン酸緩衝液、竹抽出物を作用させ、TCID50
(50%組織培養感染量)をReed-Muench法により算出した。
対照試験としてウイルス液とクエン酸緩衝液を作用させた。
【試験ウイルス】ネコカリシウイルス(F9株)
【試験サンプル】5%乾固物竹抽出物を添加
【試験結果】30分間作用させることによって99.99%以上のウイルスを不活化
【試験機関】鳥取大学農学部附属鳥由来人獣共通感染症疫学研究センター
【試験方法】試験管内でウイルス液と竹抽出物を作用させ、EID50
(50%発育鶏卵感染量)をReed-Muench法により算出した。
対照試験としてウイルス液と滅菌水を作用させた。
【試験ウイルス】鳥インフルエンザウイルス(H5N3)
【試験サンプル】5%乾固物竹抽出物
【試験結果】2時間作用させることによって99.99%以上のウイルスを不活化
ネコカリシウイルスのスパイクタンパクに作用していると推察
(1)竹抽出物はネコカリシウイルスの遺伝子に作用しないことをRT-PCR法で確認しました。
(2)竹抽出物は宿主細胞に作用しないことを確認しました。
以上の結果とネコカリシウイルスの構造から推察すると、竹抽出物が作用する部位はウイルスのスパイクだと考えました。スパイクには宿主細胞を認識する部位の存在が報告されており、竹抽出物はその認識機能を阻害することによって、ウイルスの感染を抑えていると考察できます。
竹は日本人の衣・食・住、全てにわたって密接に関わってきました。
中でも竹と日本人の食とのかかわりは、そのほとんどが食品の保存目的に使われています。竹の皮でおむすびや肉を包んだり、笹寿司、笹かまぼこ、和菓子などです。
これらは食品の日持を向上させるために、昔から生活の知恵として活用されてきました。
タケックス・ラボでは、この食品の保存性を高める成分が、竹のどの部分に最も多く含まれているのかを研究し、緑の表皮部分に多く含まれていることを発見しました。
竹は、成長期には2ヶ月で20メートルも成長します。この成長を可能にするのが内側の白い繊維質部位に存在する濃密な栄養分です。これは酸化しやすく腐りやすい上に、すぐにカビが発生し虫も入りやすい成分組成で成り立っています。
この繊維質部分を細菌やカビ、腐敗や虫から守っているのが緑の表皮部分です。
さらに竹のどのような成分が、どのような作用をして食品の日持をさせているのかという研究を進めました。
タケックス・ラボではモウソウチク抽出物を主成分として食環境や、生活環境における安心・安全を皆様にお届けできることを願い、さらなる研究開発に取り組んでおります。
定 義 | モウソウチクの茎の表皮から得られた 2,6-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノンを主成分とするものをいいます。 |
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概 要 | 中国、日本に生育する、イネ科のモウソウチク(孟宗竹)の茎の表皮を粉砕したものより、エタノールで抽出して得られたものです。 成分として2,6-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、ルテイン、クロロフィルを含む、抗菌作用があるので日持向上剤として用いられています。 |
分 類 | 内 容 |
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指定添加物 | 天然、合成など製造方法にかかわらず安全性と有効性が確認されて厚生大臣により指定されているものです。 |
既存添加物 | 食経験のある食品などの原料からつくられ長年使用されてきた天然添加物として厚生大臣が認め、既存添加物名簿に収載されているものです。 |
天然香料 | 動植物から得られるもので、食品の着香の目的で使用されるものです。 |
一般飲食物添加物 | 一般に食品として飲食されている物で添加物として使用されるものです。 |
製造用剤 | 目的が特定の用途のいずれにも該当しないと考えられるもので、 食品の日持ちを向上させる目的で使用される添加物(日持向上剤)などが含まれるものです。 |
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日持向上剤 | 比較的短日時の腐敗・変敗防止効果等の保存性を 改善する目的のものです。 |
抗菌の有効成分となっているのは2,6-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン(図-1)であり、非常に強い抗菌を有している事が報告されています(1)(2)。また、抗酸化作用を有したポリフェノール類に含まれるリグナン成分、バラノフォニン(図-2)が研究開発を進めて行く中で見出されました(4)(6)。
ラットを用いて行った急性毒性は5000mg/Kg,経口ゾンテを用いた投与の結果、5000mg/Kg投与に於いて急性毒性が認められず、各臓器の肉眼病変や無投与群との間の体重差も認められなく(2)、反復投与も無毒性量の最高用量である5%であり、変異原生試験は細菌を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験も、いずれの結果も、陰性と判断され(5)、モウソウチク抽出物は安全性が高いといえます。
従来より、竹には抗菌作用があると言われてきた中、特に、孟宗竹より抽出した、モウソウチク抽出物には強い抗菌活性が見出されています(表-1)(1)(2)(3)。
更に抗菌成分は121℃ 2時間の加熱を行っても抗菌効果は低下する事がなく(図-3)、加熱殺菌にも耐え効果的に利用ができます(6)。
細菌試験:トリプトソイ寒天37℃、48時間培養 真菌類試験:サブロー寒天20℃、96時間培養
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加熱温度:120℃ 被菌体:b.subtilis PCI-219 トリプトソイ寒天培地 (37℃ 24時間) ペーパーディスク法 |
(1) 仁科淳良ら:New Food ind., 39, 266(1988)
(2) 仁科淳良:New Food ind 33,7(1991)
(3) 食品微生物制御の化学 P239-240(1998)
(4) 菊崎泰枝、中谷延二:日本農芸化学会1999年度大会(1999)
(5) 既存添加物の安全性評価に関する調査研究 日本食品添加物協会 P16(2001)
(6) 石川 斉:月刊フードケミカル(2006.11)